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デジタル・ヘル

書評

 5月23日付け信濃毎日新聞朝刊の読書欄に、『デジタル・ヘル』の書評記事が写真
入りで掲載されました。500頁を超える拙著のかなり膨大な内容のポイントを押さえ
非常にうまくまとめてあります。筆者の池内了氏および信濃毎日新聞に厚くお礼申し
上げる次第です。

 以下、その書評記事を紹介させて頂きます。


 <ある町で、健康ネットワークプランが進められている。医療機関をコンピュータネ

ットワークで結び、患者個人の医療情報を統合しようというものだ。現在では、内科や

外科耳鼻科など、異なった医療機関で診てもらっているのが普通だが、それらのカルテ

をまとめて全人的な治療を施そうというわけだ。
 

一見して合理的なプランのように見えるが、この情報が流れだすと恐ろしいことにな

る。子どものころからの病歴が一目瞭然となってしまうからだ。さらに、病歴だけでな

く、学歴や職歴や離婚歴や性癖までデータ化して合体し、住民基本台帳に組み込んでし

まえば、私たちのすべてが政府に把握されてしまうことになりかねない。
 

そのようなコンピュータ(デジタル技術)時代の恐怖を描いたのが本書である。警察

によって「監視カメラ」が大量に増殖しており、常に監視の目が光りはじめた日本。通

信傍受法の成立によって、警察に電話の盗聴や電子メールの盗み読みが可能になった日

本。国民総背番号制たる住民基本台帳ネット(住基ネット)によって、プライバシーが

ずたずたにされそうな日本。個人情報保護法でくるまれた「政府要人保護法」が成立し

た日本。日本は、今、ジョージ・オーウェルが描いた『一九八四年』に出てくるビッグ

・ブラザーが支配するオセアニア国に似つつあると思わざるをえない。著者は、精力的

な調査と克明な取材によって、デジタル社会の影を強烈にえぐり出している。
 

プライバシーに権力を握られてしまったとき、人々は萎縮し、あきらめ、抵抗するこ

とをやめて、権力に黙って従うのみになる。それが単なる悪夢ではないことを、著者は

くどいくらいに語っている。現実はその方向に向かって進んでいるのだ。よくよく用心

しなければ、プライバシーという言葉の死語となってしまいかねない。住基ネットの稼

働を阻止している長野県の判断を大事にし、もっと広めていくのが大事だと思う。
 

「何も悪いことをしていない」と思われている人にこそお薦めしたい。

すべての情報を握られてしまうと、何も悪いことをしなくても、

いつ裸にさせられるかわからないからだ。>


 それと、私の出身校(大学)である慶応義塾の広報誌『三田評論』の6月号(6月1
日発売)にも、「執筆ノート」のコーナーで『デジタル・ヘル』の紹介を
書いています。ご興味のある方は、ぜひ、一読いただきますよう、
よろしくお願い申し上げる次第です。

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